研究について

精神障害や発達障害(例えば、統合失調症、依存症、うつ病、自閉症スペクトラム、注意欠陥・多動性障害など)の症状は、「現代の人間社会」においては、不適応(好ましくない、または異常な)行動とされています。

進化論では、このような環境に適応していない行動をする個体は一般に淘汰されてなくなるとされています。しかし、私達ヒトには、なぜか精神障害や発達障害と言われるものが無くならずに存在し続けており、とりわけ近年は、逆に精神障害や発達障害を持つ人が増加していることが指摘されています。

私達の研究は、この疑問を出発点として、精神障害や発達障害の脳神経基盤を解明することを目標としています。

とりわけ、現在は、ヒトを対象とした神経心理研究をおもに推進しつつ、動物(マカクザルやマウス)をモデルとした研究も併せて行っています。

関連するキーワード: 社会性、認知バイアス、ドーパミン・セロトニン、ストレス、脳発達、など。

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現在推進中の研究プロジェクトの例:

・依存症(とりわけ行為嗜癖)に関わる脳機能と行動特性の解明、ならびに訓化(Domesitication)との関連の解明にむけた研究

・発達障害とうつ病に関わる社会認知機能や情動機能の神経経済学的・行動経済学的研究

・基礎研究に基づいた発達障害児に対する学習・生活支援への応用

・ヒトの脳機能発達に対する社会環境の影響の研究

今までの研究の例:

ヒトを対象とした研究

自閉症スペクトラムでは、社会的順位関係の認識がふつうよりも強い(でもその認識の仕方は通常とは異なる)。
Sci Rep, 9: 15657 (2019)

自閉症スペクトラムの認知機能の障害の一部は実はストレスのため。
Neuroscience, 343: 229-239 (2017)

・行為嗜癖(行動依存)では、確率計算が上手くできず、 自己認識(認知バイアス)に問題がある。
IBRO Rep, 6: S107 (2019)

動物を対象とした研究

自閉症スペクトラムは、過密な人口密度に適応した行動特性かもしれない。
Sci Rep, 8: 3497 (2018)

・精神障害が無くならないのは、集団内に社会階級を作り出す脳神経メカニズムがあるからかもしれない。
Front Neurosci, 9: 219 (2015)
Int J Neuropsychopharmacol, 20: 324-335 (2017)
Sci Rep, 7: 43348 (2017)

・お母さんが妊娠中に経験したストレス環境は、お腹の中にいる子の脳発達に影響を与えるが、それは生後に予想される環境に適応するためかもしれない。
Neural Plast, 2015: 291476 (2015)
Physiol Behav, 165: 146-153 (2016)